柑橘の種類と栽培方法
日本で栽培されている柑橘類は「温州みかん」とそれ以外の「中晩柑-ちゅうばんかん-」(雑柑と呼ばれることもあります。)に大別されます。
「温州みかん」は通常「みかん」と呼ばれ、手で剥ける手軽さと、施設栽培も含めるとほぼ一年中食べることが出来る、日本を代表する果物のひとつです。
中晩柑はみかん以外の柑橘の総称です。色や形にそれぞれ特徴があり、「甘夏」や「はっさく」など古くからあるものや、新しく生まれた「不知火」「せとか」「紅まどんな」といったものまで数多くの品種があります。
見た目の区別はつき難いですが、みかんにも多くの系統や品種が存在しています。成熟する時期により
の4系統に分けられています。一般的には成熟が遅い品種ほど糖度が高くなり「じょうのう(中袋)」が厚くなると言われています。
そして各系統の中にも多くの品種が存在しています。極早生の「宮本早生」や「日南1号」ほか、早生みかんでは「宮川早生」や「興津早生」といったように、少しづつ特徴の違う品種が数十種類以上あります。この数多くの品種は、果実の見た目や食味というよりは、成熟時期や樹の生長具合といった栽培にかかわる特徴となっています。みかん農家といえども果実だけを見て品種を言い当てるのは難しく、リンゴやナシなどのように、店頭で品種名が表示されることが少ないのはそのためです。
また、甘さの度合いや酸味の強さといった食味に関しては、品種の違いというよりは栽培方法や気候等によるものが大きく作用します。各産地や生産者は、この数多くの品種の中から地域特性や自分の畑に適したものを選抜して栽培しています。
北東農園の主力商品である極早生みかんは「ニュー日南」、「大分」、「紀南1号」、「日南1号」といった品種を栽培しています。極早生みかんとしては、9月下旬の「ニュー日南」から11月中旬の「日南1号」まで約1ヶ月半の収穫期間があり、早く成熟したものから順番に収穫していきます。その後の早生、中生につきましても少量ですが数種類づつ栽培しています。
北東農園で栽培されている柑橘類や収穫時期などは「収穫カレンダー」でご覧いただけます。
みかん生産者は美味しいみかんを作るために様々な工夫をこらします。甘味の元になる養分をたくさん与えることや根の活動を活発にする土作り、水分を調整して濃度を上げるなど様々な方法がありますが、これらは環境や土質、品種や求める味によって生産者が独自に決めていきます。
北東農園では一部を除く温州みかんに「マルチシート」と呼ばれる透湿性シートを6月から収穫が終わるまで敷いています。「雨が多い年はみかんが美味しくない。」とよく言われますが、これは日照が少ないと糖分の生成が少なくなり、雨水でさらに薄まると考えられているからです。
その問題を解決するため根からの吸水をコントロールする「マルチ栽培」方法を採用しています。このシートは水を通さず地面の湿気を蒸発させる働きがあり、常に地面を乾燥状態におくことができます。
雨水が入らないように出来るだけ隙間のないように敷き詰めると同時に、シート上に水たまりが出来ないように排水路を確保したり、シートの上を歩いたときに石などで破れたりしないように整地する必要があり、非常に手間のかかる作業となっています。
美味しいみかんのためとはいえ、長時間土壌が乾燥し過ぎると樹が枯れてしまいます。そのために「ドリップ式」と呼ばれる灌水設備を備え、適時必要最小限の灌水によって、樹体の健康を維持しながらみかんの甘みを最大限に引き出す方法をとっています。
マルチシートと灌水設備を組み合わせることで、せっかく大事に育てたみかんが一度の大雨によって味が台無しになるというリスクを大幅に軽減できるようになり、安定して美味しいみかんが作れるようになりました。
みかんの樹は果実を生産するために多大なエネルギーを使います。そのためたくさんの実をつけた翌年は生産を休み、自身の健康状態を回復しようとする隔年結果という性質を持っています。みかんが豊作不作を繰り返すのは、この隔年結果性によるものです。
みかん生産者は毎年安定した収穫量を得るため、剪定や施肥によって着果量をコントロールする努力をしています。ただ、生産量を安定させるためのこれらの技術は食味の向上と相反することが多くあるのです。北東農園ではこの隔年結果性を逆手に取り、あえて隔年で生産するという方法をとっています。みかん園地を生産区と遊休区に分け、1年間ゆっくり休ませて健康状態の良い樹にします。そして翌生産年にはたくさんの実を成らせた上に強い水分ストレスをかけて、みかんの持つ最大限美味しさを引き出します。
栽培技術の主流からは外れていますが、みかんの本来の特性を生かすことが美味しくなる秘訣だと考えています。