認知バイアス。

2017-08-31 糖度計

2017年9月2日(土)


9月に入ろうかというここ数日は、一気に朝夕の気温が下がって秋の声が聞こえ始めてきました。

昼間の暑さは相変わらずなんだけど、ざらついたクマゼミの声はいつの間にツクツクボウシの細い鳴き声に変わり、畑を飛び回るアキアカネの尻尾が随分と赤くなってきました。

そして「極早生みかん」は少しづつ果皮の緑色が抜けてきて、収穫が近くなってきたことを示し始めます。

今年の熊野地方は梅雨明けから雨が少なく、みかんの樹は昼のあいだ少しでも水分の蒸発を抑えるため、陽射しを避けるように葉を巻いてじっと佇んでいます。

こんな年はみかんが美味しくなるのです。

美味しくなる予定です。

 

それなのに。

憂鬱な日々。

前回の記事でも書いたのだけれど、北東農園では8月に入ると定期的に糖度を測ることで成熟具合を確認しています。

でもここ3週間、つまり測定を始めてからこっち、ほとんど糖度が上がっていなかったのですね。

 

おかしい。

 

みかんは萎び、葉は退色して落葉すらしている。つまり糖度が上がらない理由が見当たらないのに、8月初めの糖度8からずっと同じまま。

いくつかのサンプルを測ってみても判を押したように糖度8。
品質が揃ってきたと喜ぶべきところもあるのだけど。

ちなみに糖度が8度というのは100gの水に砂糖8gを溶かしたというものです。

うすーい砂糖水です。

実際のみかんにはクエン酸やビタミン他のものが入っているので単純な味ではないのだけれど。

 

試しに食べてみる。

 

美味しいような気もするし美味しくないような気もするし、先週より甘くなっているような気もするけど、どちらにしても酸味が強くてよく分からない。

管理の仕方に間違いがあったのかも知れないと、記憶や記録を探っても全然思い当たるフシが無い。

ちなみにみかんの糖度が上がらない理由としては

  1. 雨の日が多い。
  2. 肥料のやり過ぎ。
  3. 水やりを間違えた。

大きな原因とすればこんなところなんだけど、

  1. 「雨の日が多い」ほとんど降っていない。
  2. 「肥料のやり過ぎ」春肥はやってないからそれはない。
  3. 「水やりを間違えた」重要部分なので慎重かつ徹底。間違えていない確信あり。

その他の細かい部分でいえば、PH高めでマグネシウム及びカルシウムが過剰気味ということで両資材を不施用にしたこと、亜鉛の欠乏症が出たので補給したこと、あとはアミノ酸などの葉面散布剤の希釈率を間違えたとか、何者かによる なんてことも考えたりしたのだけれど、そんなことで1ヶ月間糖度が上がらないなんてことはほとんどありえないわけで。

もうね、これは今まで信じてやってきたことが全て間違いであったのかと思えるような、考え方の根幹から揺るがす大きな問題に発展してくるわけですよ。

とにかく今さらながら葉面散布を止めて、大丈夫かなと思いながらも潅水量をさらに絞って、それから来年以降の施肥設計やら土作りやらなんやらかんやらをとっ散らかった頭の中で考えながら、その前にお客さんへの説明をどうするべきか、いや待て!収穫までまだ1ヶ月以上ある!!ひょっとすると今まで溜め込んでいたものが一気に溢れ出すように糖度が跳ね上がるかも知れんではないかっ!!!

そんなことあるはずないのだけど、とっちら頭は制御不能気味です。

そしてあきらめ頭で意味もなく、見た目美味しそうなのが糖度8なら、こんなんは一体いくつやろかって思って採ってきたのがこれ

2017-09-01極早生

樹勢が強くて薄成りのゴツゴツした大玉みかん。

収穫しても結局捨ててしまう、いかにも不味そうなやつを測ってみる。

 

・・・8。

 

・・・?・・・

 

「おとーちゃーん!!」

「ちょっと、おとーちゃんの糖度計貸してくれへんかなあ。」

 

んで、小玉の美味しそうなやつを採ってきて、

測ってみた。

 

・・・11。

 

おいっ!!

 

錯乱頭で、のべつ幕なしに10個くらい測り直してみる。

10・11・11・12・・・

 

・・・・・

 

 

認知バイアス。

 

結局、親父から譲り受けた年代物の糖度計が壊れていたという、アホみたいな話で3週間の憂鬱は全面解決を見るわけですが、

それにしても毎日みかんを見ていながらですよ。食べてさえいながらですよ。2-3度の糖度の差は激しく大きいのですよ。

それなのに、壊れた数字に惑わされてまともに判断できないアホ舌とアホ頭に自ら驚愕ですわ。

「認知の隔たりと固定観念によって正しく物事を捉えられずに判断を誤る。」

認知バイアスというらしいのですが、農業界ではこれを

「枝の先っちょしか見てないから間違うんじゃい!!」

といいます。

 

潅水の量を絞りすぎたおかげで、なお一層シナシナでヨレヨレになっているみかんの樹をボーっと見つめております。