みかんを甘くする方法。

みかんを甘くする方法。

2018-03-21

収穫から2ヶ月かけて、2018年度産「はるみ」の出荷が始まります。

なぜこんなに時間がかかったかというと、酸味が抜けるのに時間が掛かったからで、なぜ酸味が抜けなかったかというと、酸味が例年より強かったからで、なぜ酸味が強かったかというと、夏場に雨があまり降らなかったからで、なぜ雨が降らなかったかというと・・・私にはちょっと分かりません。

美味しいみかんの定義。

ちなみに「はるみ」は「みかん」ではなく中晩柑と呼ばれる柑橘類の一種ですけど、あまり気にせず読んでって下さい。

みかんの味を構成する大きな要素は糖分と酸味です。

みかんに含まれる糖分というのは「果糖」や「ブドウ糖」や「ショ糖」などで、酸味というのはクエン酸のことです。

味についてはその他にもビタミンや旨味成分なども複雑に関係しますが、話を広げるとだんだんとっ散らかってくるのでここは糖分と酸味の2択で話しを続けます。

みかん農家の間ではよく「糖度が10度」で「酸が1%」なんていう言い方をしますが、度と%、なぜ単位が違うのか分からないのでありますが、どちらも「度」という解釈で良いと思います。

果汁100mlに糖分が10g含まれていると糖度10度。
果汁100mlにクエン酸が1g含まれていると酸度1%。

ちなみに正確には糖分10%≠糖度10度なのですが、詳しく説明せずにそのまま進みます。

単純に糖度が高いほど甘いと感じるのだけれど、逆に酸度が高いと甘さを打ち消してしまうので、そのバランスが大事になってきます。

このあたりのことはみかんの甘さについてちょっと考えてみた icon-external-linkでも触れていますので、ものすごくヒマな時にでも読んでみて下さい。。

つまりみかんをを甘いと感じるためには、糖度が上がって酸度が下がることが必要になってきます。

みかんを甘くする方法。

テレビやネットなどでみかんを甘くする方法なんていうのがいくつか紹介されているけれど、そのほとんどが糖度を上げるのではなく、酸度を下げて甘みを感じさせる方法です。

みかんを揉んだり、転がしたり、熱を加えたりすると甘みが増すといいますが、外圧によってクエン酸が分解または自己回復のためのエネルギーを作り出すために消費されることで、結果として酸っぱさが消えて甘く感じるのであって、糖度を上げているというわけではないのですね。

簡単に糖度が上がれば苦労はしないぜ!というのが生産者の本音であり、揉まれたり転がされたりしたみかんが果たして美味しいのか?と思うわけです。

多くの果物は収獲した後も果皮に空いた気孔を使って呼吸を続けています。柑橘の場合は貯蔵されている間、徐々に(クエン酸)が消費分解されていき、自然と酸味が抜けてきます。

糖分に関しては、貯蔵中に水分が蒸散したぶん糖度が高くなるとか、品種によってブドウ糖(糖の一種)が増えるとか、ショ糖(これも糖の一種)だけがが増えるとかいろんな説があって良く分からないけれど、実際に貯蔵したあとは単に酸味が抜けただけではなく、明らかに糖度が上がっているのを感じるものがあります。

「不知火」などの中晩柑や「晩生みかん」など収穫後にも糖度が上がる品種は、完熟前の酸味が強い時期に収穫したのち、貯蔵で味が仕上がってから販売するものもあります。

ということで、先日から販売している今年の「はるみ」は、食べ頃になるまで2ヶ月掛かっちゃったあ。ということなのです。

ただ、酸味が少な過ぎてもぼやけた味になってしまうので長い期間寝かせればよいということでもなく、出荷タイミングを見計らうことも大事なのですね。

収獲してから数カ月後に、倉庫の片隅でたまたま腐敗していない状態で発見される、いわゆる「忘れられたみかん」の糖度が20度を超えてたりします。

食べるとそれはそれは甘いのですが、酸味なんか皆無で、ただ甘いだけで、しぼみ切る直前の風船みたいにシナシナで、

「甘けりゃいいってもんじゃないだろ。」

って教えてくれます。

今年の「はるみ」を食べたお客さんが「甘さと酸味が良いバランスだねえ。」と感じていただけると嬉しいなあ。