2022-06-14
農作物を栽培する時、多くの場合育てたい作物より雑草の方が成長が早く繁殖力も強いものです。畑を耕しせっかく苗や種を植えてもすぐに草に埋もれてしまって作物が育たないという状況に陥ります。
雑草をいかにコントロールするかが重要な要素となっていますが、農作業の中で除草作業は大きなウェイトを占める割には2次的要素の強い、言わば仕事のための仕事です。
農産物が人の手をかけなければ育たないのに比べると雑草の生命力は圧倒的です。特に春から梅雨の時期は日光と水分が十分あるため、毎日のように種が芽を出し日に日に大きくなっていきます。
除草の手間をいかに減らすかがとても大きな問題となるわけですが、そもそもなぜ除草が必要なのかという課題の根本を整理する必要があります。
ちなみに私が知っているのは「柑橘栽培」においての話ですのであしからずです。
清耕栽培と草生栽培。
一般的には雑草を排除して作物を作る清耕栽培と、雑草を活かして作物を作る草生栽培に別れます。
清耕栽培のメリット
- 肥料が直接地面に届くため効きが早い。
- 太陽光が直接地面を暖めるので春先の活動が早まる。
- 土の乾燥を促しやすい。
- 病害虫の繁殖を抑える。
- 草にジャマされることなく作業ができる。
清耕栽培のデメリット
- 有機物が少なく単調な土になるため別途養分供給が必要。
- 夏場の地温が高くなり根痛み等が起きやすい。
- 過度な乾燥に陥りやすい。
- 益虫と呼ばれる虫が少なくなる。
- 雨で土や肥料が流亡する。
草生栽培のメリット
- 有機物が増え土中生物が多様になる。
- 土が柔らかくなり作物の生長を助ける。
- 太陽光が直接当たらないので夏場の地温上昇を抑えられる。
- 益虫の住処になる。
- 雨で土が流れない。
草生栽培のデメリット
- 蒔いた肥料が直接地面に届き難い。
- 肥料を横取りされて作物の生長が鈍る。
- 春先の地温が上がらず作物の活動が遅れる。
- 害虫の温床になる
- 作業のジャマになる
どちらにも良い面と悪い面があって、どちらの方法を採用するかで雑草への向き合い方が変わるということになります。
清耕栽培にも常に裸地にする場合と、タイミングを見計らって裸地にする方法があり、その方法も「手で抜き取る」「鎌や草刈機で切る」「除草剤で枯らす」「シートで土を覆う」など多彩な方法があります。
また、草生栽培と言っても雑草をそのまま放置するのではなく、作物の生育や作業の邪魔するものだけを抜き取ったり、強い雑草を抑制するための草(カバープランツ)で覆う方法などがあります。
どっちが偉いとか言う話。
上農は草を見ずして草を取り
中農は草を見てから草を取り
下農は草を見て草取らず
二宮尊徳の言葉として知られていますが、これは1600年代に中国で書かれた農業書の一文です。
草刈り機も除草剤も無かった時代の雑草管理を説いたもので、大きくなって繁殖してから処理するより、草が小さなうちに処理する方がより効率的で省力的だよということを言っています。
それが日本に伝わり農業の現場で指導されるようになったのですが、いつしか「草を生やすようなヤツは怠け者だ。」という勤労道徳の格言として解釈されるようになっていったようです。
特に戦中後期の手詰まりな状況下においては、精神論として半ば強制的な指導に変質していったとも言われています。
戦時下で男手が減っていく中、競い合うようにひたすら草抜き作業をしていた(させられていた)という話もあり、単なる雑草の取り扱い一つにいかにも日本人らしい封建主義的な要素を見て取れます。
さすがに今では柑橘園の現場で手で抜き取る人はほとんどいなくなりましたが、雑草を生やすのは罪悪という感覚が現代でも残っていて、特に年配者から指摘を受けることでそれが逆に清耕という言葉への反発を感じる時があるのは皮肉な話です。
北東農園の今のところ
前回のブログでも書いておりますが、今まで行ってきた手作業での抜き取りが間に合わなくなったために、草刈機や除草剤の使用と、草の種類を選んで草生させるという方法を、区画や品種で色々と試しながら最適な方法を探っているところです。
とりあえず「繁殖する前に処理する」を念頭に置きながら、
圃場内での除草剤は今回が初めて。ラウンドアップを高濃度少量散布してみました。これで全枯れしてくれるなら楽で良いなぁ、画期的だなぁ、でもあまり多用しない方が良いらしいので、とりあえず年一回で済ませることにして、そのためにはいろいろと考える必要はありそうだなぁ。
どうも最近は草に気を取られすぎて雨の日にも休めなくなっているなぁ。少し肩の力を抜かなければいけないなぁ。
散髪には行きたいなぁ。