2014年9月16日(火)
ブログ記事を書く時は、事柄について出来るだけ確認しながら書くようにしています。
そうすることで、知っているつもりになっていただけだったり、資料を読み落としていたり、古い知識が覆されていたりということも多くて、改めて勉強にもなっています。
一向に上達しない幼稚な文面はこれに限りませんのであしからずです。
そんななか、先日の「カルシウムの葉面散布」を書く際、確認のため資料を読み直してみると「塩化カルシウム、硫酸カルシウムを主成分とした水溶性カルシウムには、果皮組織の強化とともに、ワックス量を減少させ、蒸散を促すことで浮皮を防止する・・・」なんていう記事を見つけてしまった、、、
ワックス量減少 ?
アカンやん。。
このワックスというのは、果実がカビや腐敗から自分を守るために分泌する蝋成分で、人間でいうところのお肌の潤いというやつです。
みかんはこのワックス成分によって雨などをはじいて菌の付着を防ぎます。といっても完全防水というわけではなくて、ある程度です。
それが果実の成熟とともにワックスが減り、皮膚呼吸率が高まることで着色が進みます。それに伴いカビ菌などの進入も増えることになり腐敗要因が増加する。
という仕組みになっています。人間が歳を重ねるごとに潤いがなくなって、シミやシワが増えていくのとおんなじですね。
その保護膜をずっと保たせることが出来れば、みかんの日持ちが良くなるということです。
それをわざわざ剥ぎ取って、カルシウムで果皮を強化する意味が果たしてあるのだろうか、、、
「カルシウムの葉面散布は、薬害を起こすことがあるので生育後期には使わない。」というのを聞いたことがあって、その時は聞き流してしまっていたのだけれど、このことだったのかなあ。
どっちがいいのか分からなくなってきました。
このみかんはワックス不使用です!
というのを店頭や販売サイトで時々見かけます。
「あんな見た目が綺麗なだけの、テカテカでベトベトなみかんを食べさせようとするなんて何たる時代錯誤!当農園のみかんはワックス処理をしていません!なので腐りやすいですが、安心して召し上がっていただけますっ!!」
どっかのチラシに書いてありました。
テカテカのベトベト?
腐りやすいけど安心?
たぶん「健康に害のある物質をみかんにコーティングして、日持ちを良くするのと同時に外観を綺麗に見せて、商品価値を上げようとしているみかんなぞ買ってはいけない。」
と言っているのだと思うんだけど、テカテカに光ったみかんなんて見たことないし、腐りやすいから安心とか、もはや意味不明です。
ワックスは有害?
確認の意味も込めて改めて詳しい人に聞いてみました。
JAなどの共同選果場ではいろいろな農家さんがみかんを出荷してきます。みかんに特化して高い品質のものを作る人や、兼業農家で土日しか畑に出られない農家さんなど多彩なぶん、みかんも綺麗なものからかなりそうでないものまで多彩です。
この場合の綺麗さというのは、出荷段階では回復しようのない病害虫によるキズのほか、単純に土やホコリなどの汚れが付着しているものも含まれます。
なので泥汚れなどを落とすために選別段階で一度水洗いをするのですが、そうするとみかんが自分で分泌した天然のワックス分を剥ぎ落としてしまうことになり、保護膜のないみかんは余分に水分を蒸散させ、鮮度を落としてしまいます。
同時にカビや雑菌の進入を許すことになり腐敗を招きやすくなります。
そこで鮮度保持と腐敗の予防のために改めてワックス処理を行うということです。
このワックスの成分としては植物性パラフィンというものを使っていて、リップクリームやハンドクリームなどの化粧品のほか、チョコレートのコーティングなどにも使われる、別段口に入っても問題はないものだそうです。
もともとみかんは磨けばツヤが出ますし、ワックス処理で格段にツヤが増すわけでもありません。
それよりカビ菌の中には有害なものもあるから、そちらを防ぐほうが大事でしょ。
ということです。
空気が乾燥している冬場には手を洗ったあとはハンドクリームを塗るし、その手でみかんを剥いて食べたところでなんの危険性があるのだろうか。
どうやらワックスというだけで、車や床に塗るものと同じ、さらに腐敗予防のために農薬を塗っているというイメージを重ねてしまっている感じです。
それなのにわざわざノーワックスを売り文句にするってどうなの?と思うわけです。
根拠の無い危険性を吹聴して、わざわざ自らを貶めているようにしか見えないのですよね。
で、北東農園のみかんはどないしてるの?
洗浄設備もワックスの設備もなく、JA出荷もしていないので、ワックス処理というのはしていませんが、樹上完熟させている極早生みかんの場合は特に、自前のワックス分がかなり減少している状態になっていて、クラックという小さなひび割れが出やすくなっています。
そこから水分や菌が入り込み、結構高い確率で水ぶくれや腐敗の原因になるので、これを保護するためにヤシから抽出された天然パラフィンを、収穫前の雨が降りそうな日に散布して雨水の吸収を防ぎます。
そして収穫された後は、ほこりを払う程度に軽くブラッシングしてから出荷しています。
そんなことで今回の記事の最初、カルシウム剤散布によるワックス量減少という資料に慌てた訳ですが、よくよく調べてみると同じ水溶性であっても資材によって成分が違う。
うちが使っているものにはワックス分減少とは書いていないのだなあ。
ということは大丈夫なのかなあ。
いや、ただ書いていないだけかもしれないなあ。
聞いてみたけど「そんなの別に気にせんでもええわっ!」って言われたなあ。
またひとつ足元に新たなカオスの渦が・・・
追記:
結局いろいろ試した上でカルシウムが有効であり重要であるとの認識を強めていくわけで、2020年現在では葉面散布時にカルシウム剤を種類を変えながら使っています。
これによって果皮が強くなり、ワックス成分が擦り切れることなく、完熟期のひび割れもなくなったおかげでパラフィン剤(ワックス成分)の散布が必要なくなりました。
とりあえずはカオス脱却です笑
追記の追記:
その後、やはり完熟収穫の場合では収穫後の腐敗防止にパラフィンの散布は有効であるとの考えに至り、2022年時点では天候や果実の状況を見ながら、散布したりしなかったりしています。
機を見るに敏なり!臨機応変に!です。