2020-05-04
ゴールデンウィークがガマンウィークになったり行楽日和が換気日和に変わったりと、例年になく戸惑いながら毎日が過ぎていく感じですが、畑の中はいつものように動いています。
今年はかなり早くから花がほころんで来てたのだけれど、朝晩が冷える日が続いて立ち止まったかと思えば、急に気温が上がった途端にポンッと音がするくらいの勢いで咲き始めたり。で、結局だいたい例年通りの満開日を迎えております。
天気の良いGWはみかん農家にとって防除日和となります。これから夏場に向けて病害虫の発生が増えてくると、作業日程に慌ただしさが増してきます。いわゆる防除祭りの始まりです。
気温が高くなるにつれ新しい芽が出たりや花が咲いたりすると、そこに虫が集まってきたりカビが発生したりします。
特に開花から果実形成初期の時期は、人間でいうところの生まれたての赤ちゃんの状態なのでとてもデリケートです。
この時に付いたキズは一生残ることになるので気を付ける必要があります。
今の時期のように病気(カビ)と害虫が同時発生する場合は、殺菌剤と殺虫剤を組み合わせて使うのですが、自然界には目に見えていないだけでおびただしい菌や虫そしてウイルスが存在しているわけで、それらを皆殺しにするのは不可能だし意味がないので、被害の程度を想定しながら薬剤の選択や散布のタイミングを測っていきます。
人間の風邪にも「熱に効く」「喉に効く」「鼻に効く」3色の箱があるように、病害の種類によって使う薬がたくさんあって、その中からJAから出されている防除指針などを元にして選んでいきます。
みかん栽培での防除作業というのは、一般的には水で薄めた薬剤をポンプなどを使って樹に吹き掛けるということですが、全労働の中でも労力、経費共に大きなウエイトを占めています。
ウチの農園でいうと一回の防除に3日程かかり、数万円の薬代が必要となります。
10回やれば一年の内1ヶ月間は防除作業に時間を取られ、経費の数十%が農薬代となります。さらに防護服(雨合羽のことです)を着た夏場の防除はかなり厳しい作業となるので、出来るならば少しでも減らしていきたいわけですね。
安心や安全のためではなく、労力と経費削減のためというのが本当のところです。
ちなみに現代の農薬は昔より安全性が飛躍的に向上しています。通常の使用では人体や環境に影響を与えないレベルとなっているので、防除を減らしたからといって安全性にさほど影響するわけではないと考えています。
農薬の定義や考え方についてこちらで書いています。「農薬の定義」
とりあえず今回は4月30日から開花が進んでいる品種を選んで、カビ予防の殺菌剤のほかにミネラルやらアミノ酸やらの栄養素を(わりと適当に)混ぜたものを散布しました。
その後2日ほどしてしばらくなかった雨も降ってくれて、防除にも生育にもちょうどいい感じではないかと思っています。
現在までの使用状況等はこちらでご覧いただけます。「2020年防除履歴」
これから梅雨明けまでは天気予報とにらめっこしながら、3週間に一度くらいの割合で防除を続けて行くことになるのですが、新型ウイルスのこととか考えてると、色んなものが浮き彫りになってきていて、不必要なことだったり役に立たないことが人の生活を複雑にしていたのだなあと感じます。
自然の中での人間の振る舞いや付き合い方を今一度整理していく必要があるのだろうな。