カルシウムの葉面散布。

カルシウムの葉面散布。

2014年9月14日(日)

やっとまとまった日差しがやって来ました。
雨のせいでずっと出来なかった葉面散布が本日の仕事。

葉面散布

栄養分の補給を根からではなく、葉から吸収させようというのが葉面散布。
根から吸収することを人間の食事と例えるなら、葉面散布は補助食品的な役割でしょうか。それも口からではなく塗り薬的な。

葉面吸収は根からの吸収力に比べるとはるかに少ないのだけれど、気温や土壌などの条件によって影響を受けることも少なく、葉に付着した分だけの吸収しか行わないので、養分量の計算も容易です。

植物に最も必要な養分である窒素は、冬場の寒い時期には土壌に窒素分があったとしても、根が休眠中で吸収しないため、尿素を葉面散布して窒素を補います。
ミネラルバランスを崩した場合も、不足した養分を限定的に散布してあげれば欠乏症を改善することが出来ます。

浮皮みかん。

温州みかんにとってカルシウムというのは、ミネラルの中では比較的多く必要とする成分で、牡蠣の貝殻を粉末状にしたものを土壌に撒いているのですが、夏場から収穫時期にかけては果皮の強化と浮皮予防に水溶性のカルシウムを葉面散布します。

「浮皮」というのは果実が成熟して、果肉の肥大が止まっているのに、果皮だけが生長を続けることで起きる症状です。
膨らんだ果皮が果肉から剥がれてしまいブカブカになった状態のみかんは、少しの衝撃でも果皮に亀裂が入り腐敗と食味の低下を招きます。

浮皮になってしまったみかんは商品価値がなくなり、ジュースなどに加工するか自家消費となります。
糖度も酸度も下がってしまったみかんを「剥きやすくていいなあ。」とか言い訳しながら、低いテンションで食べ続けることになります。

この果皮と果肉の生長と成熟のバランスが取れていない浮皮の原因としては、窒素過多や水分、気温などが考えられます。

生長の第一要因である土壌中の窒素をコントロールすることは難しく、窒素分が主体の肥料を土壌に施用した場合、肥料成分がなくなるまで吸収を続けることになり、みかんが成熟期になっても肥料が残っている状態では確実に浮皮の症状が表れます。肥効が弱く長期間にわたって効き続ける有機質肥料の場合は特に難しくなります。

水分も大きな要因で、これをコントロールするためにマルチシートを敷くのですが、降雨だけでなく、湿気があるだけでも果皮や葉から水分を吸収してしまい、果皮を生長させてしまいます。

そして気温によっても影響を受けます。秋に気温が高いままだと、みかんは生長段階にとどまって成熟や着色が遅れます。そのなかでも特に極早生みかんの場合は、成熟時期が9-10月の気温がまだ高い時期にあたるため、顕著に浮皮の症状が表れます。

極早生みかんが青いうちに収穫されるのは、着色を待っているうちに浮皮になってしまうという理由が大きいのです。

カルシウム。

この浮皮症状を防ぐというのが、極早生みかん栽培にとって大きな課題となっています。

気温や雨といった、人的にどうしようもない要因についてはともかく、土壌中の窒素分をコントロールすることが大事なのですが、肥料の施用量を減らせば、成長段階で必要な窒素が不足して樹勢低下や果実の小玉化を招いてしまい、隔年結果や収量減少といった、経営の根本に影響する事態になってしまいます。

そこでカルシウムを散布することで果皮を強化しようということです。
カルシウムを摂って元気な身体を作ろう!というのと同じような感じでしょうか。

葉面散布用のカルシウムにはおおまかに2種類あって、ひとつは炭酸カルシウム。果皮に吸収させて組織を強化させる作用があって、果肉と果皮の間を繋ぎ止める糊のような働きをするといわれています。同時に果実や葉が呼吸するためにある気孔にカルシウム微粒子が入り込むことにより閉じられなくして、水分の蒸散を促進させるという働きがあります。

ただ、みかんの果皮に白い粉が残るという欠点があって、農薬が付着していると勘違いされることも多く、現在は気孔からの蒸散は見込めませんが、塩化カルシウム 硫酸カルシウムなどを主成分とした水溶性のカルシウム剤を使用することが多いです。
いずれにしても食品にも使われるものなので、口に入っても問題のないものです。

このカルシウム、1度散布しただけでは効果はなく、数回行ってやっと効果が出るような気がしないでもない。といった程度です。

散布しなかったらもっとひどいことになっているかも知れないし、果皮の強化に繋がるんだという理屈を信じて散布している。というのが本当のところです。