9月に入ると極早生みかんが色づいてきて。ちょっとそわそわ。

9月に入ると極早生みかんが色づいてきて。ちょっとそわそわ。

2014年9月4日(木)

久しぶりに晴れ間が広がり、みかんの樹から水分が蒸発していくのが分かります。

雨に濡れて固く張っていた果実もいっぺんに様子が変わってきます。
皮が薄くなったような感じで柔らかくなり、そろそろ熟期が近いことを教えてくれます。
そして陽の光が当たってすこし色づいてきたようにも見えます。

あと1ヶ月ちょっとで収穫が始まる予定です。

そもそもみかんって。

そもそも温州みかんというのは、手で皮が剥ける、一般的にイメージする「ミカン」の大分類名で、貯蔵物やハウスミカンを除き、9月から翌年1月頃まで収穫されるものが一般的ですね。

ただ、ひとつの種類が長期間熟した状態で樹に成っている訳ではなくて、「極早生」「早生」「中生」「晩生」という系統に分かれています。(このあたりは「ミカンの種類とマルチ栽培について」でもう少し詳しく書いています。)

9月-10月に最も早く収穫される「極早生」と、最も遅い12月-翌1月の「晩生」では3ヶ月もの開きがありますが、開花時期は5月のほぼ同時期です。
これは熟成期間が極早生5ヶ月、晩生が8ヶ月ということになり、それは当然味にも違いが出てきます。

熟成期間つまり樹に成っている時間が長ければ長いほど糖度が上がり、酸っぱさ(酸度)が少なくなります。

糖度でいうと2-4度は違っていて(それでもその程度ですが)、食べ比べるとほとんどの方が晩生ミカンのほうが美味しいと感じるはずです。

ではなぜ極早生みかんなんてあるの?というと

早く食べられるからですね。

極早生みかん

この極早生という系統はそれほど古くからあるわけではなくて、もともと「早生」系統の中で特に酸の抜け(酸っぱくなくなること)が早い品種がありました。
(品種というのは「早生」などの系統のなかでも「宮川」「興津」といった、少しずつ特徴の違う小分類のこと。)

それを着色する前の未熟な時期に収穫して「青切りみかん」として販売していたものを新たに「極早生」として分類したものです。

今では極早生種としての品種開発がされて、より明確に早生種との区別化がなされています。

極早生みかんはなぜ青いのか。

露地栽培のみかんの旬は、極早生みかんの9月中旬頃から始まります。
旬の先駆けというのは価値があり高値で取引されますが、日が経つごとに出荷量が増えてきて相場が下がってくるため、生産者は出来るだけ早く出荷したいという気持ちが働きます。

「酸が抜けてるから熟していないけど食べられるよ。」

「皮を食べるんじゃないから別に青くたっていいじゃないか。」

「今の気温だと、甘過ぎるよりこれくらいのほうがさっぱりして美味しいぞ。」

「極早生みかんというのはこういうものです!」

と大まかに言ってこんな感じでしょうか。もちろん食べ物の嗜好は人それぞれなので、このさっぱりとした風味が食べられるのを心待ちにしている方はたくさんおられると思います。
甘いみかんならあとひと月もすれば食べられるのだから、この「青切りみかん」が今の旬なのだよ。ということです。

う-ん。それはそうですね。
ただ、業界内でよく聞くのが、「極早生がみかん相場の足を引っ張っている。」という声です。

極早生極悪説

先ほども書きましたが、露地みかんのシーズンは極早生みかんから始まります。

極早生みかんの出荷量で、みかんシーズン全体の出荷量を占うことになり、極早生みかんの味で、今年のみかんの出来を推し量る目安とされています。

業界新聞なんかを見ていると、都心の大型市場の初セリの時などは、出荷元JAのトップや時に県知事、みかん娘まで総出で市場に乗り込み

「今年のみかんは夏場の天候不順に悩まされましたが、後半の天気の持ち直しと生産者一丸となって愛情こめた生産管理のおかげで、高糖度で酸の抜けも良く、近年でも稀にみる高水準のみかんが出来ました。市場関係者の皆様に置かれましては、ぜひこの○○みかんをお客様に勧めていただき、なにとぞ高値で競り落としていただきたく…」

なんていうことが毎年同じような文言で書かれておりますが、シーズンが終わる頃、というかすでに中盤時点で

「今年のみかん相場は夏場の天候不順がたたり、糖度が低いうえに酸味が強く残る極早生みかんが大量入荷したおかげで在庫過多となり、後の早生みかんの足を引っ張る形で全面安のまま…」

というのがお約束のように繰り返されているのが現状です。

結局、シーズン当初に旬として買ってくれたお客様がリピート買いしてくれるほどの商品としての魅力がなく、その最初に食べた極早生の味をみかんの味と認識してしまって、その後美味しいみかんが店頭に並んでも手が伸びない。
ということらしい。

極早生種が出始めた頃、高値で取引されたことで産地がいっせいに栽培面積を増やし、それが出荷過多を招き、相場が崩れ、それを回避するためにより早い出荷をしようとして味をさらに犠牲にすることになり…

悪循環を絵に書いたような展開ですが、それを改善するために「極早生」からほかの品種に変えていかなければいけない。
という真っ当な意見は出ているようです。

ただ柑橘の場合、他の品種への転換には長い時間と労力と経費がかかるため、実際は現状に甘んじている高齢の生産者も多くいます。

北東農園でも全園地の6割が極早生みかんということで品種転換も考えたのですが、たとえば新しい品質の良い品種を作って高値で売れると、他の所でも生産が始まり、生産量が増えて相場が下がる。

という分かりきった話になるのがオチで、よくよく考えてみるにつけ、たとえどんな品種であるにせよお金を出して食べてくれるのはお客様であり、そのお客様が美味しい、また食べたい。と思ってくれるようなものを作ることが本当に大事なことだと思うようになりました。

その答えが他ではあまり見かけない「完全着色の完熟極早生みかん」です。

安定生産までにはまだまだ課題が山積ですが、少しづつ切り崩して削っていけば必ず山は平らになります。

そういうの得意です。

なにせ私は百姓ですから。