美味しいみかんの見分け方。

美味しいみかんの見分け方。

2014年11月26日(水)

収穫と出荷に明け暮れるなか、何度か問い合わせがあったのが、

「菊みかんありますか?」

というもの。

ちょっと答えに困ります。

このネーミングのみかん、認知度が徐々に広まってきているようで、「美味しいみかん」ということになっているようです。

菊みかんというのは

そもそも「早生みかん」とか「晩生みかん」とかの系統名ではなく、「日南」とか「宮川」とかの品種でもなく、みかんの状態を表しています。
上の写真のように果皮がデコボコした状態をいうのですが、菊の花に似た紋様から付けられた名前です。

夏場に水分と肥料養分が不足すると出る現象で、果実の成長と養分吸収のバランスが崩れている状態が果皮に現れたものです。

それがなぜ美味しいのか。

水分と肥料養分が足りないということは、

「このままでは私、枯れてしまうわ!」

ということになって、

「早く世継ぎを作らなければ!!」

ということになり、

他の人(この場合はみかんの樹ですが)より早く成熟させ、より甘くして新天地に運んでくれる鳥達に食べてもらおう。ということです。

実際みかんの樹に聞いたわけではなく、科学的な説明が出来る知識がないので、みかんの樹になったつもりでそれっぽく言ってみました。

ということで「水分と肥料分が足りない。」という甘いみかんの条件が目に見える形で出たものです。
だから「菊みかんはおいしい。」ということです。

湯豆腐のごとき絹肌の・・・

美味しいみかんを見分けるコツは、枝の切り口が細くて絹肌の様に皮の薄いものを選ぶべし。
という通説があります。菊みかんはこれを否定しているようにも見えますが、実際はどうなのでしょう。

皮が薄く枝が細いのは貧弱という意味で、養分を送るパイプが細いため、果実への生長養分供給も少なくなり、弱く薄くなる代わりに熟期が早くなり、糖分が集まりやすく成熟が進みやすいということです。

ただ、この絹肌で枝が細いのがすべて美味しいかというとそうでもなく、みかんが甘くなるには「日光」が大きく関わってくるのです。
葉での光合成によって生成された糖分が果実に送られて甘くなるからです。

この「枝が細い」というのは、日光がきちんと当たっていない日陰に出る場合も多くあり、日陰で育った貧弱なみかんは付近の葉も日陰育ちで、不十分な光合成のおかげで糖分流入が少なく、薄皮で切り口も細いのにあまり美味しくない。ということになりがちです。

実際には日当たりの良いところに成った美味しいみかんとは区別して収穫されるのですが、果実だけの見た目判断は結構難しいものなのです。

生産者サイドから見た「菊みかん」。

この「菊みかん」、以前は「小さい。見た目が悪い。剥き難い。日持ちがしない。酸味が強い。」ということで規格外扱いの「美味しいけれど売り物にはならないみかん。」だったのです。

しかも菊みかんが出来るのは樹勢が弱っている樹であり、ただでさえ問題になっている隔年結果を更に助長することになって、生産効率の悪さが目に見えるみかん。
ということで、樹を守るために施肥や剪定や摘果で「菊みかん」が出来ないように対処したうえで、それでも出来てしまったものは自家消費されていました。

時代とともに価値観も・・・

そんなこんなの「菊みかん」ですが、生産者や地元の市場や小売店など、ごく一部でしか知られていなかった規格外品も、「おいしさが目に見えるみかん。」という認識が少しずつ広がっていき、

「今年は菊、よおけ(たくさん)入っとるのお。」

「菊みかんばっかり集められやんのけえ?。」

(地元言葉で失礼します。)

というような声とともに、スキマ商品のような扱いに格上げされていき、商品価値が出てきたことで、果樹試験場も安定的な生産方法の確立を目指した検証を行いながら、新しいジャンルとしての「菊みかん」の販売を模索しているようです。

ちょっと違う・・・

でも実は、「菊みかん」のほうが「普通の形みかん」より間違いなく美味しい。というのは不正解です。
普通の形のみかんは糖度が○○以下で、菊みかんの糖度は○○以上ある。ということではないからです。

正解は、美味しくない「普通の形みかん」より「菊みかん」のほうが美味しい。です。

つまり、美味しい「普通の形みかん」はいっぱいあるけど、美味しくない「菊みかん」はちょっとしかない。

糖度13度のみかんより糖度11度のみかんのほうが美味しいものもある。

というのと一緒です。

ということです・・・・わかりにくい・・・・m(__)m

何が言いたいの?

つまりはこうです。

生産時の目標糖度が12度のみかんの樹に「菊みかん」が成れば、それは「普通の形みかん」より美味しい。

生産時の目標糖度が15度のみかんの樹に成る「菊みかん」は、美味しい「普通の形みかん」と変わらない。

・・・・・やっぱりわかりにくい・・・・・m(__)m

つまりのつまり、うちのみかん箱の中には「菊みかん」と「普通の形みかん」が混在していますが、味は変わりませんよお!
だから「菊みかん」じゃないからといってがっかりしないで~!!

ということです。

「菊みかん」にさせたところで味が変わらないのなら、わざわざ無用に樹を痛めつけて樹勢を落とす必要はない訳です。

そのつもりで栽培管理をしていたら、今作は極早生種には見事に「菊みかん」1個も無し。
でもそれを見た市場関係者から

「菊が入ってないじゃん!」

って言われてしまいましたのです。

ほかの所からは

「菊みかんばっかり集めれば高い値段で売れまっせ~!」

的なことも。

う~む。

ただね・・・「菊みかん」を作ることは出来ますよ。隔年で作っているのですから、多少の樹勢低下は気にしないでいられます。

そして「菊みかん」ばっかりを集めて売ることも出来ましょう。キズを見分けるよりはるかに簡単です。

でもそうすることで「美味しい普通の形みかん」の値打ちを下げるようなことがあってはならんと思うのです。

あのデコボコのみかんの形は、あくまでも「美味しいみかん」を見分ける、あくまでも一つの目安です。
大事なのは基準以下のものは作らないのだ。それ以上のものに序列なぞ必要ない。という強い心構えとその実践です。

よしっ!これで行こう!!!

とか言いながら、来年「菊みかん」ばっかりだったらニヤニヤしてしまうのだろうなあ (*´∀`*)

長い話だったなあ~ (*´∀`*)