2022-08-18
規制の掛からないお盆休みは久しぶりということで、観光や帰省でどこも賑わいを見せていたようですが、そんな喧騒をよそに北東農園の畑では、水やりをすれば雨が降り、散布作業をしても雨が降り、先週刈ったばかりの草が元通りに生い茂り、シートを巡ってタヌキとイタチごっこしたりと、あまり外界に触れることもなくいつもと変わらぬ日常を送っておりました。
全体的に見ると今夏の当地方は雨が少ないです。降っても短い時間で少量のみという場合が多く、しかも梅雨明けが例年と比べて3週間も早かったため、長期間に及ぶ干ばつ状態になっています。
みかんの樹には過酷な状況ではありますが、10月から収穫が始まる「極早生みかん」にとってこの時期の水不足は、品質の善し悪しを決めるターニングポイントになります。
春から生長を続けていた樹がこの時期の水不足で、
「あ、このままじゃ枯れちゃう!子供たち(みかんのことね)を早く世に送り出さなきゃ!!」
と思って成熟への作業に切り替えるきっかけとなります。
収穫期の遅い「早生」以降の品種であれば比較的ゆっくりと切り替わっていけば良いのですが、こと「極早生」に関しては収穫までの時間が短いので、早めの切り替えで成熟期間を長く取りたいわけです。
見た目でいうと、この時期に樹がエエ感じに萎れていれば、切り替えのスイッチが入ったと判断できるので園主はニヤつきます。水着のグラビア写真を見たときくらいのニヤつきです。
とは言っても全部の樹が同じ状態ではなく、たくさん実が成り過ぎて枯れそうになっている樹や、実が少なく元気が有り余っている樹などさまざまです。
この樹の状態(樹勢と言います)を均等に出来れば同じ品質のみかんが出来るということになり、みかん栽培の最も重要な部分ではあるのですが、なかなか上手くはいかないのですね。
春先までは同じように見えても、樹の健康状態によって花の咲く数が違うと、そこから樹勢の差がどんどん開いていき、それが最終的に品質の差となって現れます。
具体的には萎れた樹に成るみかんは小さいけれど美味しく、実の少ない樹に成るみかんは大玉で味が薄いといったようなことです。
夏場になったこの時期の樹勢や成り具合の差は、もはや小手先の調整でなんとかするしかないわけで、潅水設備を使って全面に少なめの水を与えながら、実が成り過ぎて小玉になりそうな樹は、個別に水を追加しつつ摘果をしてこれ以上萎びないように調整します。実が少なくて大玉になりそうな樹は、まあ、あまりやることがありません。
雨が少ない夏ということで、今のところは美味しいみかんになると予想されていますが、これから台風とか秋の長雨とかによって予想は簡単に覆るわけで、当然その可能性は十分過ぎるほどあるわけで、かと言って生産者のやれることはあまりなく、みかんの様子や天気を見守るしか術のない気疲れの多い季節に入っていきます。