引いたり足したり。

中休み

2021-06-24


うっとうしい雨が続いたかと思うと梅雨を忘れたかのような快晴があったり、なにかと目まぐるしい天気です。
その雨と日光を交互に受けながらみかんが日に日に大きくなってきています。

みかんは土から水分や栄養を根から吸って生長するのは植物なので当たり前っちゃあ当たり前の話なんだけど、動物のように取り込む水や栄養の種類を自分で選べないから、土の中にどんな栄養素ががどれだけ含まれているかがすごく大事なのですね。さらに土から吸い上げた栄養分を果実と一緒に畑の外に持ち出してしまうので、年数とともにバランスも変わっていきます。

タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルが人間の必須栄養素と言われていますが、農作物の場合は窒素、リン酸、カリウム、ミネラルとなります。

植物特有の光合成は人間の呼吸にあたり、日光と雨という自然の恵み(時には災いの元だけど)を使って半ば自動的に行われているためあまり意識はしないのですが、土や作物内の栄養管理については人の手で行う必要があります。そしてその必要量は作物や品種によってさまざまで、基本的にはJAなどが出している施肥設計を参考に施していきます。

例えばみかんであっても極早生種と早生種では要求量が違うため、更に細かい調整をする必要が出てきます。
それなのにその状態が見えないというのは悩ましいところですが、いわゆる人間の健康診断にあたる土壌診断というのがあって、土に含まれる栄養素を数値によって見せてくれます。

腐植の値が極端に低いのはご愛嬌ですが(笑)、この数値を見ながら多いものは減らし少ないものを増やしたりしながらバランスを取っていくのですが。。

みかんが教えてくれる

日に三食をラーメンばかり食べていたら塩気の多い食べ物を受け付けなくなるし、お酒を飲み過ぎたら排出機能が強く働いたりします。
いわゆる自覚というやつが自分の健康状態を保つ役割をしてくれますが、喋れないみかんの場合は症状が出てくるまで気づかないということになります。

ミネラル(亜鉛)欠乏
葉っぱが落ちたり

症状が出たときは時すでにお寿司です。

土壌診断というものの重要さを痛感した次第ですが、じゃあ診断書に従っていればよいのかと言うとそれがそうでもないところが難しいところです。

あ、ちなみにこれはずい分前のごく一部分の話ですので、今年の出来栄えに心配はご無用です。(^^)

この時はいろんなところに相談もして「まずは堆肥を入れて腐植を増やす」、「とりあえず亜鉛を葉面散布で補給」、「リン酸が多いから含有量の少ない肥料に変える」、「PHが下がるまでカルシウム(石灰)の投入はしばらく止める」、「マグネシウムも止めてみましょう」みたいなことになった訳ですが、

その後、樹の状態、味、ともにズタボロ~・・・

結局、亜鉛の補給のみ2回ほどおこない、他を全部元に戻すことで一応の収まりを見たわけですが、診断書に現れていた数字とその対応を照らし合わせた結果、そもそも普段から主要な肥料をかなり減らして栄養失調気味だったはずなのに各成分の過剰な状態というのは、石灰やリン酸やマグネシウムのやり過ぎが原因ではなく吸収できなくなっている状態だったということ、通常使用する農薬に含まれている亜鉛成分が農薬を減らしたことによって欠乏したことが原因ではなかろうかということに落ち着いたわけです。

これで得た教訓としては「数字だけ見ていてはダメ」そして「兎にも角にも観察」ということでしたね。

最近はアミノ酸やらその他の栄養素を与えることで樹の健康状態が良くなったとか、糖度が上がったコクが出たとか、病害が減ったなんていう色んな情報をインターネットで得ることができます。
科学(化学?)が進み、植物内の作用などが解明されてきたおかげで、以前はカンに頼ってきたみかん作りもずいぶんと進化してきたように思います。

糖度の上がる仕組みを化学的な数式を使って説明されると、農学も化学も知らない論文も読めない自分にとっては「おぉそうなんだぁ~」とかなって、さっそく資材名調べてみたりするわけです。

で、説明書読んで「おお~こりゃすげ~~!!」とかなって、あれこれお取り寄せして取説通りに使って、効果が出たり「・・・」とかなったりというね。。

海のものから作られた資材を使ったみかんがダシの味した時はびっくりしましたね。笑

つまりはみかんにとって足りなければ効果は出る。いらないものをやっても効果は出ない。という実に普通の結論しか出てこないわけですが、何が足りなくて何が足るているというのは畑の持ち主しか分かり得ないわけでね。

立派な子供を育てた人の子育て本通りにやっても立派な子供が育つわけではないというね。

そういう意味ではいろんなものを減らし過ぎて失敗したことで、ボーダーラインというものを意識できた大事な失敗だったように思います。

正しい足し算は何が足りないのかを知ることから始まるのだ。

それには数字と経験とカンの3つを駆使するのだぁ。

答えはみかんが教えてくれるのだ。

というのが北東農園のモットーであります。

(モットーの話やったんかい・・・)