今回も読んで頂き誠にありがとうございます。とりあえず今回で書き溜めていた分は終了ですお疲れさまでした。
2023-06-13
ここのところずっと雨が降っていて、土もみかんも洗濯物も乾くヒマなしです。植物にしたらどんどん大きくなって元気いっぱいですが、私といえば生乾きの作業服を手に取った時点でテンションが下がってしおしおです。いつもこの時期はもう1枚新調したいなぁとか思うわけですが、まあ、乾いた作業服を着たところで1時間もすれば汗と袖から流れ込む雨でぐずぐずのしおしおになるだけやけど。。
そんな中みかんは雨でたっぷり水分を吸収しながら順調に大きくなっております。
切ってみるとすでに房の分かれ目が出来上がっているのがわかります。このみかんは9房あります。温州みかんの場合、房の数は10前後と言われていて数が多いほど美味しいとか言われます。
こちらの実は12房です。
同じ大きさのみかんであれば数が多いほど一つの房が小さくなるため、各房に運ばれる栄養が凝縮されて美味しくなるという理屈だったような気がします。
まあ、房の数を数えてから食べる人はあまりいないとは思いますが、皮を剥かずに房の数を調べる方法があって、みかんの頭に付いているヘタを外すと維管束(いかんそく)という各房の皮(じょうのう)に養分を供給する管が見えます。この管の数が房の数と同じということでヘタを外した写真がこちらですが小さ過ぎて見えませんでした。w
ちなみに同じ「日南1号」という品種の極早生みかんなのですが、この房の数の違いはどこから来るのかと言うと、先程の9房の方は遊休区の実で12房の方は生産区の実です。遊休区は樹勢回復に向けた栽培管理を行い、生産区は美味しい果実の生産に向けた管理を行っているので、大雑把には房の数が多いほど美味しいという理屈が成り立ちます。
遊休区と生産区てなんやねん。
通常のみかん栽培ではあまり聞かれないワードですが、北東農園では一つの品種をみかんを「生産する区画」と「休ませる区画」に分けて、一年おきに生産をする「隔年交互結実法」という栽培方法でみかんを作っています。
当園地では、簡単に言うと水はけが良過ぎで肥料持ちの悪い土でさらにマルチシートで水分ストレスを掛けてみかんを作っているのですが、毎年みかんを成らせると樹が徐々に枯れてしまうのです。これを回避するために生産した翌年はゆっくりと休ませて体力(樹勢)を回復させ、翌年にまた生産をする。という方法を取っています。
元々みかんには実が成った翌年は花の咲かない芽を出す「隔年結果」という性質があり、これを利用した栽培方法となっています。
柑橘栽培ではこの「隔年結果性」を抑えて生産量を安定させることが重要な要素となっていて、施肥で樹勢を整え、剪定で花芽のバランスを取り、摘果(人為的に果実を落とすこと)で最終調整を行って連年安定生産を目指します。これができないと3t採れた翌年は1tしか採れなかったというような事態が発生して、経営が非常に不安定になってしまうわけです。
しかしながら本来持つ性質を抑え込んで連年結実させるには高度な技術力が必要で、剪定や摘果においては数週間から月単位の長時間作業が必要にもなります。
ちゃんと勉強していなかったせいで剪定はヘタだし摘果は退屈で眠くなるしその挙げ句に隔年結果が直らないとなれば「もう!みかんが休みたい言うてんねんから休ませたったらエエやん!!」っていうことで「隔年交互結実法」への移行となりました。
安易ですねぇ、素人丸出しですねぇ。
親父も良く許可出したもんだなぁとか思うわけですが、この時に決断していなければ今頃どうなっているかと考えるとちょっとした寒気は覚えますね。夏場の寒気は風邪かオカルトです。
当然教授してくれる人もなく、断片的な資料をネットで探して読み漁りながら、従来の連年結実の手法がまったく通用しないということに気付くのに数年、それから試行と錯誤と錯乱を繰り返して約10年。ほとんど登山の途中で隣の山に飛び移るくらいの大胆さなわけですが、ほぼ素人だったその時はそんなこと思いもよらず、15年近く経ってやっとこの栽培方法の本質と道筋が見えかけてきたかなというところです。
試行錯誤(錯乱はちょっと減った)はまだまだ続いていて、「早生」と「中生」は順調ではありますが植栽本数が少なすぎて安定販売には至っておらず、主力の「極早生」は完全に隔年に移行できていないながらも、物量に任せて販売しているといった状況となっています。
というわけで、只今「極早生みかん」遊休区の絶賛全摘果と剪定の最中でございます。これが上手く行けばこれから良い夏芽が出て来年爆成りです。の予定です。上手く行かなければ来年も花が咲かずにムダな努力に終わります。
「きっと来年こそは!」がモチベーションとなっておりますが、袖から流れ込んでくる雨水にしおしおです。