夏の日差しとみかんの味

2020-08-28


今年の熊野の夏は、7月末まで一月近く続いた雨が明けてから一転、3週間以上まったく雨が降らず、今までで一番暑いんじゃなかろうかと思う気温と相まって、なんだか何もかもが干からびている状態です。

みかんも色あせた葉は丸まりながら日差しを避けるように閉じ、実は萎びて成長を止めています。じっと堪えながら雨を待つ姿は少し痛々しい感じがします。

この状態からみかんの樹を救うには水を沢山あげれば良いのですが、「ある一定の時期に一定の乾燥状態を保つ」というのが温州みかんを美味しくさせる条件の一つでもあって、夏の日照りはまったくの悪条件というわけでもないのですね。

暑さと日照りが続くと樹からどんどん水分が失われていき、

このままでは私、枯れてしまうかも知れない(;_;)

早く子供を育てて種を残さなければ!

鳥や動物に自分の実を選んで欲しい!!

実の成熟に全力を上げる。

美味しくなる♡

詳しいメカニズムはよく分かりませんし樹がそう言っているのを聞いた訳でもないのですが、だいたいこんなことを考えながら暮らしているのだと思います。

まあ実際にはみかんには種がなくて運ぶのも食べるのも人間で、種の継続にはその人間の手が必要という、みかんにとってはなんとも切ない話ではありますが。

この水分ストレスでの負荷による食味向上はあくまで条件の一つであって、小玉化や隔年結実(翌年着果しなくなる)や枯死といったリスクを伴うため、度が過ぎると逆効果となります。
本来であれば十分な光合成と根による栄養分の吸収、それを促す適度な雨によって健全に生長と成熟の過程を経るのが一番良いのですが、いかんせん天気はそう都合の良い方に動いてはくれないので、人の手でつじつまを合わせる必要がでてきます。

極早生みかんと水分ストレス。

特に「極早生みかん」の場合は成熟期が早い(早生みかんよりも約1ヶ月)分、時間を掛けて糖度を上げる余裕がないので、人為的に成熟を早める状況を作り出していきます。

具体的な作業としては、マルチシートで地面を覆って雨の侵入を防ぎ、少量の潅水で枯れないように一定の乾燥状態を保ちます。成熟を早めながら、同時に相反する果実の生長も進めていくという流れになります。
雨の多い熊野地方はこのマルチシートの使用率がかなり高いというのを聞いたことがありますが、雨が降っていないので今のところはシートの効果は全然なしです。

光が反射して目が痛いです。

マルチシートについてはこちらで→

このあたりのやり方は、ほ場の環境や土質、それに大きさや糖度などの目標値によって千差万別です。美味しい産地のやり方をそっくり真似た所で同じモノが出来ないのが農業の難しさで、それが醍醐味でもありますね。

一番難しいのが潅水のタイミングやその量で、天気を予想しながら葉を見て実を触って決めていきます。少し足りないくらいがちょうど良く、弱り過ぎている樹には個別に水を入れたり摘果をしたりしながらバランスを取っていきます。

今年の食味については、梅雨明けが遅かった分だけストレス負荷の開始時期が遅れはしましたが、雨が降らなかったおかげで今のところは上手く行っているといえます。

収穫まであと約1ヶ月半、仕上げの段階に入ると人の手で出来ることが限られてきて、これからの天気で今年の味が決まります。夏場とは逆に「雨よ降らないで」と願うことが増えてくるハズです。

今までやってきた下ごしらえが功を奏するのかどうかは、まさに天のみが知るといったところですがどうなりますでしょうか。

流石にいつまでも夏ではいられないようで、もうすぐ9月に入ろうかというここ2.3日は朝夕に少し涼しさを感じたり、虫の音が変わってきたり、時々雨が降ったりと、少しづつ秋に向かっているのは確かなようです。