甘みと酸味と雨と。

雨期

2022-09-09

9月に入って雨がちな日が続いています。先日の台風11号もこちらでは直接的な影響は無かったのですが、台風の通過に伴い秋雨前線が刺激され、時折強い雨と風が吹いたかと思うと急に青空が広がるといった状況でした。

みかんにとっては基本晴れてて一週間に一度くらい適度の雨というのが望ましいんだなぁ。こうも曇天が続くと気分もどんよりとしてくるんだなぁ。でもそこはお天道さんの気分次第なのだなぁ。

はぁ…。

たまに青空が広がるといっぺんに色づいてきたような気になりますが、曇り空の下で見るとそうでもない。

甘みと

夏の暑さが終わり朝晩の気温が下がり始めると、収穫の早い「極早生みかん」から順番に、それまですくすくと育っていた「栄養成長」から、成熟に向かう「生殖成長」の段階に入ってきます。

甘みは夏場からの陽の光によって光合成で作られていきます。そして秋口になり朝晩の気温が下がりだすと生殖成長にスイッチが切り替わります。果実肥大が止まり、果皮の緑色が徐々に薄くなってきて、おしりの方から橙色に発色を始めます。

それがこの時期に雨や曇りの日が続いてしまうと、光合成で作られる甘みが増えないと同時に、果皮の着色が遅れ、雨の水分によって果実肥大が止まらなくなります。そして残暑によって昼間の気温が高い日が続いてしまうとさらに栄養成長に振り戻されてしまい、いつまで経っても仕上がってこないといった非常に悲しい状況になってくるのです。

だったらその分収穫を遅くすればいいじゃん!と考えがちですが、ある一定の時期が来ると果皮の老化が始まってしまうので、それまでに収穫する必要があるのですね。

特に極早生品種の場合は、生殖成長に切り替わるのが暑くて雨の多い時期と重なるため天気の影響を受けやすいのです。
ここ数年は夏の終わりに雨期かと思うくらい天気の悪い日が続いているので、極早生を諦めて収穫時期の遅い品種へ切り替える人も出てきています。

酸味

みかんには甘みと同時に酸味も大事な要素です。みかんの酸味はレモンと同じクエン酸で出来ていて、甘みが作られる前の栄養成長期はレモンのようにひたすら酸っぱい味がします。これが生殖成長期に入って成熟が進むに連れて徐々に分解されていくという仕組みになっています。

酸味の分解には成熟に伴う自然分解の他に水分が大きく関わっていて、夏場に日照りが続き収穫前にも雨が降らないと非常に酸っぱいみかんが出来てしまいます。おそらく乾燥によって根が傷んでしまい、酸が高止まりしてしまうということなのでしょうが、詳しい理屈は知りませんが多分そんな感じだと解釈しています。

例えば糖度が12度あったとしても酸度が1.5%あれば酸っぱくて美味しくないと感じますが、酸度を1%まで下げることができれば美味しいみかんと感じます。逆にこれが酸度0.7%まで下がってしまうと甘いだけのだるーい味になってしまいます。

*糖度や酸度は果汁100gの中に含まれる割合を表していて、例えば果汁100gの中に糖分が12g含まれていると糖度12度(%)となります。
ただし糖度計で測定した数値は「水に溶けている固形分の量」であり、糖分だけではなく酸やその他のものも含まれた値となっています。

ということで、糖度を上げつつ酸味を適正に出来るかどうかが美味しいみがん作りの核心となるわけなのですが、、

ここのところの長雨の影響によって、「肥大が止まらず糖度が上がり難くなっていて酸味がどんどん下がっている」といった状況となっています。

え~、最悪じゃ~んもうダメじゃ~ん!

とか思ってしまいがちではありますが、

あながちそうでもなくて、

夏場の日照りで強い乾燥ストレスが掛かっていたのと、雨水の侵入を制限するマルチシートのおかげで「小玉で糖度高めの酸度も高め」で推移してきていたので、このまま行くと何となくちょうどエエところに落ち着きそうな感じでもあります。

このあたりは毎年8月から定期的に糖度や食味を測定してきたデータと照らし合わせて判断しています。

つまりここ数年は夏場の日照りからの秋の長雨が恒例となっているので、糖度や食味が例年通りであれば仕上がりも例年通りになるでしょう!と、勝手に予想を立てております。

いつ止むかも分からない雨のことやら、何個かは来るであろう台風のことなど、心配事は尽きませんが、気を揉んでも仕方ないもんは仕方ないので気楽にやっていくのみなのであります。

今のところ極早生みかんはこんな感じです。収穫まであとひと月とちょっとです。