2015年8月25日(火)
前回の記事「農法と商法。」では、北東農園は「効果」や「安全」など、比較実証できていない曖昧なセールストークは言いません。という記事を書きましたが、なぜ言わないのかをもう少し言います。
ヘンな展開ですがご了承ください。
農作物を作るなかで、資材名や理念的な「農法」のほかに、「有機栽培」や「無農薬栽培」などという表現もあります。
こちらは一定の栽培基準に基づいた栽培方法について付けられる名前のようです。
栽培方法の違いって?
- 慣行栽培
- 減農薬栽培
- 有機栽培
- 無農薬栽培
- 自然栽培
大まかな分類としてはこんな感じだと思います。
人や環境面での安全に対して、一般的には農薬の使用が大きく関わると考えられていて、慣行栽培から自然栽培まで下に行くほど安全度や安心感が増すような気がします。
ただこれも「農法」と同じように正式に定義されているものは少なく、イメージで語られていることが多いのです。
ちょっと意地悪くネガティブイメージも含めて簡単に説明すると・・・
慣行栽培
農林水産省によって登録された化学農薬や化学肥料の他、有機や無農薬の栽培方法も含めた総合的で最も一般的な栽培方法。
栽培品目や地域の気候特性に合わせて農薬の種類や使用量が決められています。
安全が証明されているから農薬。用法を守れば一切問題なしと考える。
減農薬栽培
国のガイドラインにより化学農薬、化学肥料共に地域の使用基準より50%以上削減したもの。使用できる資材は慣行栽培と同じ。
そもそも地域によって使用基準がバラバラなので、なにをどれだけ減らしているのかが分からない。
有機栽培
「有機JAS法」に基づき、一定期間化学農薬や化学肥料を使わず、指定された天然由来農薬や有機質肥料のみを使用した栽培方法。
「有機JAS認証制度」を受けるためのコストが掛かり過ぎる。
無農薬栽培
農薬を使わない栽培方法。化学肥料も使わない場合は「無農薬無化学肥料栽培」。
農薬として登録されていなければ使用OK。そのなかには安全性が?なものも。
自然栽培
農薬だけでなく外部から一切の養分供給もせず、自然のままで作物を栽培する方法。
収穫量が少なく経営が成り立ち難い。地力が枯渇するまでの期間限定。他所からの影響を受けない立地条件も必要。
有機、無農薬信仰
上記の栽培方法のなかで明確な基準があるのは「有機栽培」のみです。
その他の栽培方法については生産者の自己裁量に任せていた所があり、曖昧な表現が消費者の誤解を招くということで、農林水産省が「特別栽培農産物表示ガイドライン」というものを作って栽培方法の明確化を図ったわけですが、これがまたややこしくて困るわけです。
特別栽培農産物表示ガイドライン=農林水産省パンフレット
有機JAS規格=農林水産省パンフレット
そもそもなぜ「有機栽培」とか「無農薬」だとかの表示やアピールがされるのかというと、 農薬や化学肥料など人工的に生成された化学物質には危険性があり、口に入れる食べ物にこのようなものを使用すべきではない。との考え方が多くあるからなのですが、
「食」に係わる生産者の責任
数十年前までならいざ知らず、現代農業は科学の進歩により、危険が認められる農薬の使用禁止や改良、さらにリスクの低い新薬の開発がおこなわれています。そして農薬法などの改正を繰り返すことで、危険性に関しては
- 「現在の農薬は人体にも環境へもほぼ影響を与えていない。」
- 「有機栽培の安全性と慣行栽培の安全性はイコールである。」
と言われています。
異論もあるでしょうし、新たな危険性の指摘などもありますが、それを解明し改善していくのもまた科学の役目です。
真実の眼を持たない我々は、科学に信頼を寄せながらも常に勉強することでしか進歩はないのです。
これとは別に「化学物質過敏症」や「アトピー性皮膚炎」など、原因や治療法が解明されていない症状について、それらを改善するために農薬や化学肥料を使用していない農作物を求める方々がいます。
また、信念に基づいて労力を費やし生産効率の劣る「有機栽培」や「自然栽培」で農作物を生産する方々がいます。
彼らにとって化学的に合成されたものを口にしない、させないということが大事なのであり、
「農薬を減らしているので安全です、有機肥料を使っているから安心です。」というのとは、まったく別なのです。
慣行栽培者や削減栽培者が、安全性を比較検証もされないまま安心安全をアピールすることは、逆に自らを否定しているように思えるのです。科学的な検証をなされたうえでの安心や安全は、こだわりではなく「当然」でなければならないと思います。